2021/09/24 15:00

立ち昇る湯気を見ながら
いつか観た風景を思い出します
"食"が生まれる瞬間はいつも、どこかに世界の一部を切り取った縮図のようなものが見えてくる
発酵によって何かが生まれる瞬間には、生命の共鳴を感じます
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生命(微生物)と繋がり
廻りながら生きていく
"黒パン"が生まれてから
10年を過ぎた

2021年元旦
久しく訪れた山の記憶(湧水)と
焼ける大地(焼いたライ麦粉)で
「始まりの黒パン」を焼きました

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粉雪舞う早朝
神々しい光と
太陽の熱を浴びて
ゆっくりと膨らんだ
美しく割れた谷から
大地の焼ける香ばしい匂いが
夜明けの大気にたちこめた

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翌日、切り分けて
再びこんがりと焼いた黒パンを
濾過した山の水に浸す
微生物たちの発酵を待って
クヴァス(ロシアの古代ビール)を作る

黒パンを絞ったクヴァスは
明るい金色で酸味がある新鮮なビールのよう
(ライ麦麦芽を使うと黒ビールのような色になる)
絞ったあとの黒パン粕はマッシュして
黒パンの生地に混ぜ込みます
(ドイツのレストブロートという技術と似ており、風味や保湿性を高める効果があります)

クヴァスは発酵液種として
パン粕は本捏ねで黒パン生地へ
こうして「生命の水」と「大地の記憶」は循還し続けるのです

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時間をかけ発酵を繰り返す
小さくて多様な微生物たちの営みが
黒パンの生命を繋ぎ
滋味深い味と香りが黒パンの中に刻まれていきます

「大地や空、光やにおい
食べた瞬間にイメージの世界への旅が始まるような
ちょっぴり特別な食卓をお楽しみいただけたらと思います」